人手不足問題の原因と対策 採用に頼らない課題解決方法とは?
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現代日本が抱える問題の一つに「人手不足」があります。
今や非常に深刻な社会問題であり、多くの企業、特に中小企業の悩みの種となっています。
もしかしたら、これを読んでいるあなたの会社も人手不足に悩んでいるのではないでしょうか。
経営者からすれば、人手不足は経営に大きな打撃となるため、是が非でも解決したいもの。
また、実際に現場で動く従業員目線でも、一人当たりの業務量を超えた労働を強いられるのはたまったものではありません。
「人手が足りないのならば、とにかく採用に注力すればいいのでは?」
そう考える方もいるかと思います。
ですが、現代における人手不足はそう単純なものではなくなっており、従来の対策だけでは解決しきれない可能性があります。
非常に根深い人手不足はどうして起こっているのか原因・背景を明らかにしていきます。
そして、Web・IT・AIを活用した採用に依存しない人手不足解消の方法をご紹介します。
現代の人手不足とその背景
そもそも人手不足とは、業務を行う上で社内の従業員・労働者が必要な人数に達しておらず、支障が出ている状態です。
とにもかくにも、働ける人がいないといった状態ですね。
従業員がケガで入院している場合や産休を取っている場合なども人手が足りなくなることがありますが、あくまで一時的なもの。
従業員が少なくなって困るかもしれませんが、時間が経てば解決するため、それほど問題にはなりません。
対して、慢性的な人手不足となると、何もしなければ解決することはありません。
「とりあえず求人を出していれば、いずれ応募があって採用できる」 なんて悠長に考えていては、ますます悪くなる一方です。
既存の従業員は、その不足している人員分の業務量が増えるため不満がたまります。
最悪の場合、過労が原因で離職してしまい、ますますの人手不足となるという悪循環も。
そんな人手不足はなぜ起こってしまうのか、まずは根本的な原因について確認していきます。
ちなみに、似ている言葉として「人材不足」がありますが、こちらは「特定の業務を行う上で必要なスキルを持った人」がいない状態という意味合いで使用される場合が多いです。
例えば、マーケティング業務を内製化したいけどできる人がいない場合は人材不足といえます。
労働人口の減少と少子高齢化
現在、日本の労働人口は減少傾向にあります。
そもそも、働ける人が少なくなっていることが人手不足の要因といえるでしょう。
厚生労働省のデータによれば、主な労働力となる15~64歳の層が年々減っていることが分かります。
将来的には2040年で6,213万人、2070年には4,535万人にまで減少すると予測されています。
この問題と切っても切り離せないのが「少子高齢化」です。
周知の通り、日本の少子高齢化は歯止めが効かない状態であり、高齢化率は年々上昇しています。
以下の内閣府が出している令和4年版 高齢社会白書をみても分かるように、棒グラフ上部青色の0~14歳層の減少と反比例するように赤い折れ線グラフの高齢化率は右肩上がりです。
若年層の割合が減るということは、将来的な働き手が減るということ。
現時点での働き手が少ないのに今後も減り続けると、ますます社会全体で労働人口の減少が進み人手不足が深刻化していってしまいます。
働き方の多様化
ひと昔前は就職活動を経て内定を獲得、会社員として企業に勤めるという働き方が普通でした。
ですが、今は全く異なります。
個人事業主やフリーランスとなり、会社に属さなくても働けるようになりました。
そして、そのような働き方を求める人も増えています。
これは2021年のコロナウイルスの流行が大きく起因しています。
社会的な常識が一新され、これまでの会社員としての働き方が見直されるようになりました。
フリーランス人口がコロナ禍の前後で2倍に増えたなんてデータもあります。
それと比例するように、企業からの採用を求める人も減少の一途をたどっています。
こうした新しい考え方、価値観は若い世代を中心に広がっています。
先にも述べた労働人口が少なくなっていることも含め、今後さらに若年層の採用は難しくなってくるでしょう。
求人と求職者の不一致
労働人口の減少、少子高齢化の中ででも、仕事を求める人は少なからず存在します。
ですが、当然ながら求職者も仕事を選びます。
特に現代は仕事に「働きやすさ」が求められる時代ですので、少しでも大変そうな・ネガティブなイメージがある職種は敬遠されがちです。
例として、体労働のある建設業やストレスを抱えやすい介護関係、サービス業などは人が集まりにくい傾向にあります。
一方で、昔から根強い人気のある事務職は常に希望者が絶えません。
こうした差によって「人員を募集しているのに採用できない企業」と「職を探しているのに就職できない求職者」が混在するという一見矛盾しているような状態に陥ってしまいます。
結局企業は人を増やせず、この求人と求職者の不一致は人手不足を加速させています。
従来の解決策の限界
上記の観点から、人手不足問題に対して採用の見直しや強化を行う従来の方法では解決が難しいことが分かるかと思います。
多くの企業が人手不足で悩んでいる中で求職者の争奪戦に参加しても、かえって疲弊してしまうだけです。
焦って採用してしまっても、その人とミスマッチが起こっていたら早期離職につながり、せっかくかけた費用と工数が無駄になってしまいます。
仮に良い人材を採用できたとしても2~3年での転職が珍しくない現代で長く働いてくれるとは限りません。
採用活動も重要ですが、それだけで人手不足を解決しようとするのは賢明ではありません。
むしろ人手不足問題は採用する以外にも解決の手段があります。
次章ではその方法について解説していきます。
人手不足の根本的な解決へ:ITとAIの活用
結論から述べると、人手不足は、ITとAIを活用することによって解決することができます。
旧来型の業務では、ほぼすべての作業工程で人が行う必要がありましたが、テクノロジーの進化により、人が関わらずとも行える業務の範囲が拡大しています。
特に近年ではChatGPTをはじめとしたAIの急速な発展により、顧客からの問い合わせ対応など必ず人が対応していた業務ですら代替できるようになりました。
そもそも、企業における人手不足の状態は、それ自体が問題であるわけではありません。
人手が足りないことで業務および経営に悪影響を及ぼしていることが問題です。
言い換えると、人手が足りない状態でも業務が滞りなく行えるようになれば、経営上問題ないといえます。(もちろん現場に過度な負荷がかかっていない状態でなければなりません)
人手不足という目先の課題に振り回されず、その先の経営課題に目を向けることが重要です。
そこで取り入れたいのが、先述したITやAIです。
上手に活用すれば、新たに人を採用しなくてもあなたの会社の経営を維持、さらには収益を増やしていくことが可能です。
IT活用による仕組み化は自社の資産になる
ITを活用することで、人的リソースを使わず普段の業務を効率的に行えるようになります。
ただ、メリットはそれだけではありません。
ITを導入することで、人に依存しない業務フローを作り、業務の効率化を図ることができます。
例えば、クラウドベースのツールや自動化ソフトウェアを導入すれば、業務が標準化され、特定の従業員に業務が集中するリスクが軽減されます。
これにより、従業員が不在でも業務が滞らずに進行し、生産性が向上します。
さらに、ITによる業務仕組み化は長期的なコスト削減やリスク回避の面でも企業に貢献します。
業務フローの可視化と自動化で無駄な作業を削減し、効率的なリソース配分が可能となります。
これにより、採用や人材育成にかかるコストや時間を抑え、限られた人材で高い成果を上げることができるのです。
ITを活用した仕組み化は、企業の持続的な成長を支える重要な資産となります。
労働集約型の経営からの脱却
人間の労働力に依存する労働集約型の経営は、人的リソースに大きく依存するため、特に中小企業にとって将来的なリスクが高まります。
従業員一人ひとりに頼ることで、個々の生産性が経営の成否を左右し、人材不足や従業員の負担増加によって企業の成長が停滞する可能性があります。
また先述の通り、人口減少や労働市場の競争激化により、今後は質の高い人材を確保することが一層難しくなるでしょう。
人員頼りの経営では、企業の柔軟性が欠如し、外部環境の変化に対応しにくくなります。
従業員の退職や病気が業務に直結するため、安定的な事業運営が困難です。
こうしたリスクを回避するためにも、労働集約型の経営から脱却し、ITやAIといった業務の自動化技術を活用して効率化を図ることが不可欠です。
これにより、少ない人的リソースでも高い生産性を維持し、持続的な成長を実現する経営体制を構築できるのです。
ライトアップでは中小企業・小規模事業者様のIT・AI活用のご支援を行っております。
何から初めていいか分からない、まずは誰かに相談したいといった方はぜひお気軽にお問い合わせいただければ幸いです。
従来の人手不足の解決策
ここまでIT・AIを使った業務効率化による人手不足解消方法について述べてきました。
だからといって、既存の社員や採用活動をないがしろにしていいわけではありません。
従来の人手不足対策も同時進行で行うことで盤石な経営体制を整えることができるでしょう。
今日から着手できるものもありますので、ご紹介いたします。
定着率の向上
人手不足の解決策として、まず重要なのは人を増やす前に「人を減らさない」という考え方です。
新しい人材を採用することはもちろん大切ですが、それ以上に、既存の従業員が定着し、長く働き続けられる環境を整えることが、人手不足の根本的な解決に繋がります。
従業員の定着率が低いままでは、新たに採用しても離職が繰り返され、結果的にリソースの無駄遣いとなってしまうからです。
まず、従業員が仕事に対して満足感ややりがいを感じられる環境を作ることが、定着率向上の第一歩です。
例えば、働きやすい職場環境の整備やワークライフバランスの改善などが挙げられます。
詳しくは次章で述べますが、過度な残業やストレスを減らすことで、従業員の精神的・肉体的な負担を軽減し、長期的な定着を促進します。
結果的に、従業員の離職を防ぐことで、採用コストの削減や知識・スキルの蓄積が進み、人手不足問題の緩和に繋がります。
労働条件、環境の見直し
求職者は企業情報を確認する際、必ずと言っていいほど貴社での労働条件をチェックします。
福利厚生が充実しているかどうかも求職者が見るポイントになります。
労働条件が魅力的に感じないと、それだけで入社意欲の低下につながります。
そもそも応募が少ない、面接して内定を出しても最終的に辞退されるといった形で人が採用できない状況になりかねません。
業界全体や、同業他社が出している条件と比較したときに自社が方が魅力的に見えるように調整しましょう。
また、条件の見直しは求職者だけでなく、すでに在籍している社員の退職防止にも有効です。
人事評価制度の刷新
労働条件と重なる部分かもしれませんが、人事評価制度の見直すことも重要な要素といえます。
従来の評価制度が社員のパフォーマンスを適切に反映していない場合、それが離職に直結してしまう可能性があるからです。
主な対策としては透明性のある評価基準の制定、評価プロセスの数値化などが挙げられます。
どうすれば会社から評価されるのかが社員の中で明確になることで、モチベーションをもって業務に取り組む環境を作ることが可能です。
例えば「会社への貢献度」という評価基準ではまだ抽象的だといえます。
より深堀して、どのような貢献の仕方があるのかまで伝えることで具体的になっていきます。
人事評価制度の刷新による社員のモチベーション維持は、人が辞めにくくなり結果的に人手不足になりにくくなるといえます。
多様化する雇用形態への対応
人手不足を解消するためには、現代における雇用形態の多様化に柔軟に対応することも不可欠です。
以前はフルタイムで働く正社員か、それに準ずるアルバイトくらいしかありませんでした。
しかし、今では特定業務だけを行う業務委託や単発バイトといった、柔軟な働き方が一般的になっています。
こうした雇用形態を積極的に導入することで、従来の採用市場に存在しなかった人材を確保できる可能性が広がります。
また、多様な雇用形態を導入する上で、特に注力したいのが女性・シニア層の採用です。
従来の正社員が基本だった採用市場では、時間的・体力的な都合もあり、女性・シニア層は働く意欲があっても採用されにくい傾向にありました。
ですが先述の通り、現在はフルタイム以外の働き方が可能です。
懸念材料だった時間的制約がなくなったことで、女性・シニア層が働ける機会が増えました。
比例して採用の対象者が増えることになるため、人手不足問題の解決につながるでしょう。
外国人労働者の採用強化
人手不足対策として近年注目されているのが、外国人労働者の雇用。
先述した労働人口減少に反比例するように外国人労働者の人口は年々増えています。
厚生労働省の「外国人雇用状況」の届出状況まとめによれば、2023年時点で外国人労働者は200万人を超えています。
今やコンビニなど身近なところでも外国人労働者の姿を見るようになってきました。
都心だけでなく、地方でも雇用している企業は少なくありません。
外国人専門の人材紹介会社なども増えてきていることから採用ハードルは低くなっており、小規模事業者でも活用しやすい施策といえます。
まとめ 人の労働力に頼らない経営に
日本の中小企業が直面する最大の課題の一つが「人手不足」です。
特に、労働人口減少や少子高齢化が進行する現代社会において、この問題は深刻化しています。
その影響で企業は労働者不足になり、業務停滞や従業員の負担増加などの悪循環に陥りがち。
解決策として新たな採用に注力するのが一般的なアプローチですが、採用競争が激化している中、人材確保の難しさは増すばかりで、欲しい効果が得られない可能性があります。
一方で、労働力不足に対して有効な手段が、ITとAIを活用した自動化や効率化です。
例えば、AIによる顧客対応やデータ処理など、従来人が行っていた作業を自動化することで、人的リソースに頼らない経営が実現します。
限られたスタッフでも業務の質を維持しながら、業務量を削減することが可能となります。
また、IT活用は単なる一時的な解決策ではなく、企業の成長を支える基盤を構築します。
業務フローの自動化や標準化は、長期的なコスト削減やリスク管理に寄与し、人材不足に対する持続的な対応が可能です。
さらに、従業員の定着率向上や働きやすい環境整備など、従来の施策も並行して実行することが、経営の安定化に繋がります。
結論として、人手不足解消にはITとAIの積極的な活用が鍵となり、従来の労働集約型経営から脱却することが重要です。
一朝一夕ではいかないかもしれませんが、貴社でできることからぜひ取り組んでみてください。